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業界関係者でなくても基本:契約製造 製造委託 Contract Manufacturing の失敗事例 Schwinn(シュウイン)

企業が生産を別の製造業者と契約し委託し、その一方で、マーケティングは自社の管理としておこなう。これをContract Manufacturingという。他国進出時には、市場規模が工場を立てるほどのものではなく、高い関税障壁があるわけでもないという場合におこなわれる。P&Gがアリエール洗剤のロシアでのContract Manufacturingをおこなったのは、製造コストを下げ、輸入関税を避ける目的だった。また、人・モノ・金のリソースが足りない場合にもおこなわれる。Contract Manufacturingの本質は、ある企業の経営者が、別会社の生産能力を借りることにある。

Contract Manufacturingはまた、実質的に柔軟性を与えてくれるものでもある。依頼企業は生産の品質や納期の確実性において満足できない場合、少なくとも契約期間が完了すれば、あるいは契約合意内容と大きな開きがあるのであれば契約期間内でも、他の製造業者に変えることができる。さらに、市場撤退を決断した場合にも、生産施設投資からの損失ということにはならない。

一方で、生産品質を依頼企業の標準に合致させるための管理が必要となる。納期、製品保証、追加発注などで問題となる可能性がある。コスト効率性は委託元企業よりも委託先工場の方が悪いかもしれない。生産能力が劣るかもしれない。合意内容を無視するかもしれない。

技術保護の観点で不適切な扱いを受けた危険な例としてよく知られたものが米国の自転車製造業者のシュウイン(Schwinn)のケース。

アメリカ国内市場で確固たる地位を築いていたシュウイン社だったが、海外からの安い製品などにより次第に市場が侵食されつつあった。

シュウインは自社生産から外注生産に切り替えることを決定。初めは日本へ、次いで台湾の製造業者のジャイアント(Giant)に委託した。

アメリカ国内の工場はたたみ、ジャイアントと、テクノロジーおよびエンジニアリングでパートナーシップを結んだ(技術供与した)。シュウインはジャイアントの株式を保有したいと申し入れたが、ジャイアントはこれについては一切を拒否。このためシュウインとしての管理権は一切もてなかった。

シュウインはジャイアントに左右されないように、ジャイアントと競わせるために、中国シンセンの低コストな製造業者の中華自転車(チャイナバイシクルズ:CBC)とも別に新たに手を結んだ。シュウインはジャイアントと同様、中華自転車にも技術供与し、その技術水準を向上させた。

その後、中華自転車ダイヤモンドバック(Diamond Back)の名前を買い、アメリカにシュウインの競合として乗り込んできた。

ジャイアントとダイヤモンドバックはどちらも市場シェアに食い込み、シュウインは倒産。スキーアクセサリーの製造業者で当時マウンテンバイク事業参入を狙っていたスコットに買収された

Contract Manufacturingには優位点が多々ある。企業の優位性がマーケティングやディストリビューションにある場合には特に。

けれども、その契約交渉においては十分な配慮が要求されるものとなる。

企業が製造機能を直接的に管理できない状況に陥ってしまうと、委託先製造業者の品質や納期が自社基準に合致するかどうかを常に確認するための機能を自社で所有しなければならなくなる。

これはアメリカのあるマーケティング戦略の教授の話からです。

いままで知っている中で、シュウインジャイアントに委託してから倒産するまでの経緯で、そのほかの国や新しい米国内工場などの詳細は端折られていますが、大きい流れはこのとおりです。(詳細は2004年記事 道で大変なバンプに遭ったシュウインで)

新しい発見は、ジャイアントだけではなくてダイヤモンドバックも一緒に、そのアメリカ進出でシュウインが倒産する原因と書いている点です。

トレックのクロモリ時代の初期の技術の要の一人、ティム・アイザックさんがトレックを辞めて中華自転車の技術担当副社長だったころです。そういう事情を知れば、単にシュウインの技術が盗まれたりしたものでもないとも考えられるはずです。

ジャイアントをアメリカ国内で推進したのはアメリカ人の自転車業界者で、それも旧シュウイン関係者も多かったのです。

ダービーUSAフィットネス部門社長、Bill Austin(William W. Austin Jr. ) ビル・オースチンさん。2001年新生ラレー、「持ち株会社ラレーサイクル傘下のアメリカ子会社」ラレーUSAのCEO/会長。ラレーサイクル会長のフィンデンクロフツさんからアメリカを任されています。
ビル・オースチンさんは、1987年のGiantジャイアント米国オフィス開設時の責任者、ついで初代社長(1987-1993)でした。それ以前はシュウインの副社長でマーケティングチーフだったのです!(1981-1986)。この後の1999年に米国ジャイアント社長となるのが、1993年から1998年までスコットUSA傘下となっていたシュウインの自転車事業責任者となっていたBMXプロダクツ社(Mongooseマングース)のSkip Hess Jr. スキップ・ヘス・ジュニアさんでした。アメリカのジャイアントはシュウイン経験者が切り開いたということです。 (「業界の基本:ラレーの歴史 沿革とちゃま解釈」 1994年)

そして、シュウイン倒産の真の原因は、『シュウイン経営層のおごり』にあって、おごりなどなければ防波堤になってシュウインを守ってくれるはずの『ディーラー』が、上のような『ジャイアントやダイヤモンドバックの側のアメリカ人の方にシンパシーを感じ』て『シュウインから離れていった』ことにあるというのが、詳細をよく知る人の意見のようです。(スコットに買収された時のスコット側の発言を読んでください。歴史ある子供の頃から乗っていた「シュウイン」の名前は好きなのだけど、シュウインを運営している人たちにはうんざり・・・という気持ちだったようです)

でも、上のような視点で、見識ある方々が広く公の席で語っているのですから、少なくとも世界のMBAの多くの人たちが、このことを学んでいるはずです。

少なくともシュウインが伝統の100年以上の技術で作った今の自転車などないことは普通のアメリカ人なら当たり前に知っていることです。シュウインがメーカーでないことも当たり前のことです。それなのに・・・・シュウイン フリーホイラー 宣伝記事のうそ FQ Japanの記事について・・・というような神話が語られて、その神話に、厚生省や総務省が「イクメン」振興で、バナーを貼って、さらに、その神話の後押しをしてしまっていました。日本の消費者庁は、ビアンキでサイクルヨーロッパジャパンを言う前に自らの足元からしっかりしないといけないのではないでしょうか?この点は、消費者庁はいままでまったく指摘していません。身内に甘いのでしょうか?サイクルヨーロッパジャパンの問題も1年たって何が変わったのでしょうか?

自転車業界の人でなくとも知っている話なのですから、自転車業界を担当しているメディアや自転車産業界の広報担当や自転車業界の歴史担当者であれば、そういうことを知らせてくれないといけない話ですよね。

ブリヂストンサイクル株式会社のような業界の中枢企業が重要なお知らせで「ビアンキ社」と書くようなおかしいことをしているのも、この流れにあるとおもっています。こんなことでいいのでしょうか?

消費者庁は、怪我をしてから注意するのではなくて、こういうところに対して注意をだしてほしいと思います。

BAAはこういうところに対してガイドしてほしいと思います。

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