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環境問題への取り組み コロンビア、ボゴタの変容 , 1995-2000: 市民性と都市交通への投資 »

自転車ビジネス ダン・エンプフィールドさん スロートゥイッチ2002年9月10月

http://www.slowtwitch.com/mainheadings/features/bikebiz.html
Dan Empfieldさん
クインタナルー創業者1987年。クインタナルーバイクは1989年。ネットでのトライアスロンニュース、コメントがSlowtwitchスロートゥウィッチ


スロートゥイッチ(Slowtwitch) 筆者のジャーナリズムタイトル
The bike biz バイクビズ‐自転車ビジネス
ダン・エンプフィールドさん(Dan Empfield), Sept-Oct '02
www.slowtwitch.com出版人 1957年生まれ
トライアスロンのQuintana Roo「クインタナルー」創業者(1987年)



ちゃままえがき

「The bike biz」と題して、自転車ビジネスがどんな風におこなわれているかを2002年秋にダン・エンプフィールドさんが書いた話です。自転車関連のブログやフォーラムなどいろいろなところで紹介されています。(Google参照

ダン・エンプフィールドさんはトライアスリート(トライアスロンの選手)で、クインタナルー創業者。クインタナルー (Quintana Roo/キンタナロー/QR) はトライラスロン用のウェットスーツと自転車を製作販売していた会社。1987年にウェットスーツから始まって自転車は1989年からだそうです。1995年にシューズメーカーのサッカニー(Saucony, Inc.,)が買収してサッカニー自転車事業部門となりました。ダンさんはこのサッカニー自転車事業部門トップとなって、マーリン(Merlin Metalworks)やリアルデザイン(RealDesign)も買収。(サッカニーの日本でのアキレス紹介は神話的です⇒下部)

Saucony自転車事業部門(QR, Real Design, Merlin)は2000年に投資会社JHK InvestmentsのABG(アメリカンバイシクルグループ)に売却されて、いま、ABGにはLitespeed、Merlin、Tomac、Quintana Roo、Real Designがあります。ダンさんは1999年にはサッカニーを辞めてスロートゥイッチ(Slowtwitch)というトライアスロンの専門ネットサイトをはじめました。この記事はスロートゥイッチに2002年に掲載されたものです。スロートゥイッチをはじめて10年以上になりますからダン・エンプフィールドさんのキャリアとして最も長いのがネットサイトということです。

ダン・エンプフィールドさんの"slow twitch"というのは"slow twitch musle fiber"(遅筋線維)のことで、マラソンランナーなど持久力のための筋肉繊維。長時間少ない力をだしつづけられる筋肉です。ダン・エンプフィールドさん自らのミドルネームや通称としてSlowmanを使っています。
(キャノンデール創業者の息子さんでキャノンデールではマーケティングのトップだったスコット・モンゴメリさん(2004年からスコットUSA社長)と一緒に写っている2006年ハワイ・アイアンマンレースでのダン・エンプフィールドさんの写真(sports.webshots.com))

ダンさんの話にプロダクトマネージャーの典型としてジェフ・メノウンさんという人が登場しますが、リアルデザインから来た人です。ジェフ・メノウンさんはABG(アメリカンバイシクルグループ)でもプロダクトマネージャーを務めた後、米国ジャイアントに転身してこちらでもプロダクトマネージャー(プロダクト開発マネージャー)です。


『自転車ビジネスがどんな風におこなわれているのか』
「自転車がペーパーナプキンに書いたスケッチから近くの自転車屋に展示されるまで。ポイントだけ。」とダン・エンプフィールドさん。

自転車の製造の面で『台湾とどう具体的に関係しているのか』を中心に書かれています。


◎「ストーリー展開に不要な唐突な描写を見せられるハリウッド映画みたい」と感じるかもしれないけれど、これは「物語を進めるためには不可避」。このビジネスには弱見というか、ダーティーなちょっとした秘密があって、それは業界の誰もが最終ユーザーには読んで欲しくないと思うこと。でもスロートゥイッチ読者は大人だから真実を正しく取り扱ってくれると思っている。


ちゃま:日本の自転車の宣伝だけを見ている人だけじゃなくて、アメリカの人でも普通の人にはこの話は唐突な話なのでしょう。
「物語を進めるためには不可避」とは「自転車業界が業界としてここまでくるにはいまから説明する<<アジア生産移転>>が避けられなかった」ということでしょう。

◎(アメリカでの)自転車ビジネスにはアメリカ部分とアジア部分がある。フレームがアメリカ製でもその両面が必ずある。そういうことがまったくないのは数少ない小規模なビルダーだけ。(アジア部分は)最初は日本からはじまった。(2002年時点で)20年前(1980年代)から台湾製がだんだん増えた。いまでは一部のコンポーネントやサブアセンブリー(部分組立品)で台湾メーカーが世界の一流(エキスパート)にまでなった。だからアメリカ国内で(の組立で)自転車「全体」を作っていたとしても、自転車の「全体(丸々全部品)」が(ひとつ残らず)アメリカ製ということはない。


<<アメリカ製のように見えてアメリカ製じゃない部品が数多く使われている例>>
ダン・エンプフィールドさんが使っているトライアスロンバイク『Yaqui Carbo』

ボクが使っているトライアスロンバイク『Yaqui Carbo』はサンディエゴのベス・マンダリック(Ves Mandaric - Mandaric Cycles)が作った。アメリカ製のイーストン・スカンジウムチューブ使用。台湾製部品はカーボンシートステー、チェーンステー、ボトムブラケットシェル、ヘッドチューブ、Syntaceエアロバー、あとブレーキレバー、ハブ、リム。デュラエースコンポーネントは日本製。

http://www.mandaric.com/ Ves Mandaricさんはスラブ系の人でダンさんの会社でQRを作っていた人(http://www.slowtwitch.com/mainheadings/product2006/tribikes/tribikeyaqui.html) (Ves Mandaric (ロードバイクはMandaric印、トライアスロンバイクはYaqui印) ) Syntace http://www.syntace.com/ なんで読むのでしょう。英語読みならシンテイスでしょうけれど、ドイツの会社のようなので会社ではどんなふうによんでいるんでしょうね。ドイツ語よみならSyntaxがズュンタクスなのからするとズュンターツェでしょうか。


どうして君の自転車がこんなふうに組み立てられているのかもっとより理解できるようになると思う。


プロダクトマネージャー/製品管理 THE PRODUCT MANAGER
エージェント/台湾代理人(代理店) THE TAIWANESE AGENT
ファクトリー/台湾工場 THE TAIWANESE FACTORY
アセンブラー/組立者/組立業者 THE ASSEMBLER
ディストリビューション/流通 DISTRIBUTION
エンジニアリング、品質管理、安全性 ENGINEERING, QC, AND SAFETY
ケーススタディ/事例 CASE STUDY


THE PRODUCT MANAGER 
プロダクトマネージャー/製品管理


◎プロダクトマネージャーは自転車ビジネスの重要部分。プロダクトマネージャーの役割は業界で違う。薬業界のプロダクトマネージャーは治験(新薬臨床試験)からFDA承認までを担当する。製造、マーケティング、販売は扱わない。自転車業界のプロダクトマネージャーはモデルの初期段階から完成段階まで、製造工程も含んだ一貫を管理する。一般に若手。完成品をマーケティング担当に渡すところまでが範囲。「どう売るか」を考えることは普通はしない。「どう作るか」だけ。

◎プロダクトマネージャーがトライアスロンバイクのモデルを管理するのが仕事ならトライアスロンバイクについてすべてを知っていないといけないか?それはケースバイケース。



メノウンさんは2003年8月4日付でジャイアント・バイシクルのプロダクト開発マネージャーです。
http://www.allbusiness.com/retail-trade/miscellaneous-retail-miscellaneous/4138077-1.html
Jeff Menown Settles In At Giant
ジェフ・メノウンがジャイアントに落ち着く
2003年8月22日 バイシクルリテーラー誌

前アメリカンバイシクルグループプロダクトマネージャーのジェフ・メノウンは(2003年)8月4日付でジャイアント・バイシクルのプロダクト開発マネージャーに就く。

「アジアでの業界知識でライトスピード(Litespeed)の完成車プログラム確立に重要な役割を果たした」とメノウン自身が語った。

カリフォルニアで働くのはメノウンにとって初めてではない。Sauconyサッカニー自転車事業部にいたときはサンディエゴで暮らした。メノウンの4歳になる娘は母とタホに住んでいる。

「娘のことを考えると帰りたくなる。いろんなことを聞いてくるような歳になったんだ。」

American Bicycle Groupアメリカンバイシクルグループではテネシー州チャタヌーガで3年間暮らした。

「南カリフォルニアにまたこれてうれしいよ。さらにそれ以上にジャイアントにこれてもっとハッピーだ。」


プロダクト開発マネージャー、ジェフ・メノウンによれば、2008年のトランスはアンセムXCレースのいい面を引き継いでいるという。
http://www.cyclingnews.com/features/giant-goes-lighter-and-deeper-with-2008-line-of-trail-bikes

http://www.bikeschool.com/staff.htm
ジェフ・メノウンがUBIに自転車業界の豊富な経験をもたらす。シアトルエリアでの大型自転車店数店で(レンチを使って:技術系で)働いたのが最初。後に製造業者側に移って、アメリカンバイシクルグループとジャイアントでプロダクト・マネージャーだった。
ちゃま:ジャイアントはすでに過去なのでしょうか?


◎アメリカンバイシクルグループ((American Bicycle Group)ABG)のジェフ・メノウン(Jeff Menown)が(若干違いはあるかもしれないけれど)典型的なプロダクトマネージャー。

メノウンの担当は・・・ ・ライトスピード(Litespeed)とマーリン(Merlin)では「完成車販売される分に関して」部品スペック決めの責任をもつ。フレームスペックは管理外。チタンフレームジオメトリー、チューブスペック等を担当する社員が別にいる。 ・クインタナルー(Quintana Roo/QR)の完成車では従来型のプロダクトマネージャー。その全工程を担当(handle)。QR完成車のほとんどが台湾製。台湾製QR完成車、プロダクトマネージャーのメノウンさんはABGが台湾で使っているエージェント(代理人)の助けに頼って仕事をする。エージェントはABG以外の他社(欧米のコンポーネントやアクセサリーの会社)のエージェントも兼務している。 ライトスピードのアルミバイクも、((QRと同じように)ライトスピード所有のチャタヌーガ工場外で製造するようになってからは)、メノウンさんが全製造プロセスについて担当(husband )しているハズ。


◎メノウンはクインタナルーから(買収時に)ABGに移って現在ABG。自身はトライアスリートじゃないがトライアスロンと密接に関わってきた。エクステラ(XTerra)を主戦場としている女性プロトライアスリート、Cherie Touchetteは長年の友人。

(ちゃま:Fresh Air Sports - Coach Cherie's Bio.

◎メノウンはコンポーネントメーカーのリアルデザイン(Real Design)買収でQRに来た。メノウンの強みは台湾製コンポーネントをよく知っていること。販売価格2000ドル未満の完成車ではプロダクトマネージャーが『台湾で何ができて何ができないかを理解していること』が必須。

◎(ダンさんの2002年時点の台湾評価)

台湾は長年、いい品質のフレームを提供してきた。いまではフォーク、クランク、エアロシートポストといったコンポジット(複合素材)製品群で非常に優れた品質のものを提供している。ここ数年では、高品質のリアハブやクランクを調達できるようになった。いまの台湾は競技品質のブレーキキャリパー製造まで手を広げてきている。まだカセットの進化には追いついていないし、日本製やイタリア製のシフターやディレイラーに追いつくにはもう少し時間がかかるだろう。でもサドル、シートポスト、ステムに関して言えば、台湾は増々その調達元になっているし、チューブ製造工場(フレームチューブ)はとてもよくなっている。リスペクトされている欧米チューブ(フレーム)ブランドも、いくつか(実際には「ほとんど」)が、中価格帯以下の製品では、エキゾチックな台湾製チュービングを用意するようになった。(ちゃま注:『「エキゾチックな』とは「見栄え」のことではなくて、「欧米生まれではない(つまり欧米製ではない)」というニュアンスで、枕詞のように使っているのでしょう)

台湾製パーツを仕様に組み入れれば価格を下げることができる。「適切に機能するレベルを維持しながら、どの程度台湾製を使えばいいのか」をメノウンはよく知っている。

◎メノウンさんや同じ立場のプロダクトマネージャーがどの程度主体的にやっているのか(プロダクトマネージャーのリーダーシップ)についてダンさんは「過大評価しない。ほとんどやっていない。」といいます。「ABG社の意思決定は会議で決定される。メノウンの仕事は意見やコメントをプレゼンすること。皆から最終スペックの合意を得たら、後は製造工程全体に『立ち会』い、守るべき『最終ユーザー出荷期限日』(ちゃま:発売日)を忘れさせないのが仕事となる。」

<<トレックの体制>>

◎トレックの場合は少々事情が異なる。
・自転車事業部全体を統括するプロダクトマネージャーがいて、ジョー・バデボンクール(Joe Vadeboncoeur)が担当している。ゲーリーフィッシャー(Gary Fisher)とクラインバイシクルズ(Klein bicycles)も含めての統括。
・バデボンクールの下にジョン・ライリー(John Riley)。トレックブランドだけのプロダクトマネージャー。
ジョーVことジョー・バデボンクールさん
現在はトレックのVPバイスプレジデント
(トレックのJoe VブログYou can call me Joe 2013年から)
Joe

Hi, I’m Joe V. The V is for Vadeboncoeur, but no one ever really calls me that (except my business card). That card also calls me the Global Director of Product Development, Marketing and Creative Design for Trek Bicycle. Yep, I am sometimes not really sure what all that means either. I do know that I dig bikes, oatmeal, motorcycles, burritos, the weird things I see along the way, my family and my job. I get to travel the world helping make great bikes, so it’s a pretty great gig. ハーイ!ジョーVだよ。VはVadeboncoeurのことだけど誰もそうは呼んでくれない。名刺だけ。そういえば名刺には、トレック社グローバルディレクター・オブ・プロダクトデベロップメント、マーケティング、クリエーティブデザインとも書いてある。ああ、ボクはときどきこれがホントはどんな意味なのかよくわからなくなるんだけどね。わかっていることは、ボクは自転車が好き、オートミールが好き、モーターサイクルが好き、ブリトーが好き、ふと見つけた変なものが好き、家族と仕事が好き。ボクはすばらしい自転車をつくるのを手伝うために世界中を旅している。これはちょっとしたいいギグ(ミュージシャンセッション)だよね。


2013年のブログなのでダンエンプフィールドさんの2002年記事から11年経っていますけれど、おもしろいでしょう?ファンになっちゃいますよね!
(ジョーVもライリーもトライアスリートじゃない。自転車のデザインのために経験者がプロジェクトの責任者となる必要性をトレックは認識していて、ある特定のシリーズには競技のプロをプロダクトマネージャーとすることもある。トレックがリカンベントやタンデムを作る際にも取った体制。Hilo(ヒロ)シリーズのプロダクトマネージャー、マーク・アンドリューはトライアスリート。コナに6度、ペンティクトンに6度、参戦しているトレックの技術者。)
・トレックの場合は、どのモデルにもそれを担当するプロダクトマネージャー(ライリー)がいる。さらにプロジェクトマネージャー(Hiloのアンドリュー)がいることもある。
・デザイン技術者(デザインエンジニア)もある。アンドリューはこれも兼ねている。技術者(エンジニア)という用語は社員をより重要な気分にさせる肩書としては使われない。たとえば、衛生技術者(サニテーションエンジニア)などは訓練された(スキルある)技術者だが。(ちゃま:社員にやる気をださせる肩書はエンジニアではなくマネージャーだといっているのでしょう。アンドリューさんはデザインエンジニアが本業でプロジェクトマネージャーは敬称なのかもしれません。)
・他に、パーチェーシングエージェント(調達代理人)がある。

◎以上の職種では、「能力のないサブアセンブリ販売員を訓練し、その職種に配置する」というようなことにはならない。成功しているトレックのような会社では「(その道の)プロ」を雇う。これはABGと違うところで、メノウンが(たぶん)調達工程まで面倒を見なければならないのとは違う。こういうところでは完成車もパーツもすべて外注。

◎注目すべき点

トレックではペイント(塗装/色)、グラフィックス(模様/紋様)、モデル名称はマーケティング部門の管轄


プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャーは「その自転車がなんていう名前になるのか知らない」。どんな見栄えになるのかも知らない。プロトタイプが出来上がって初めてプロダクトマネージャーも知る。

これについてはABGでも同様。


・トレックでは品質管理(検査部門)は独立部門。トレックやキャノンデールといった大会社になるとすごい検査施設をもっている。
・最後に、仕上げが組立技術者(アセンブリエンジニア)に任せられる。これも本物の技術者(エンジニア)で、つまり自転車を入れるのに必要な箱のサイズを計算し、出荷途中で壊れないように梱包素材を適切に選択し、ケーブルはどの程度の長さが必要か、ブレーキレバーはハンドルのサイズに合ったものか、などなどをとりあつかう。つまり、デザイン技術者は(台湾への)「入力技術者」。一方の組立技術者の仕事は、(台湾からの)「出力」を解析して、自転車本体、その付属部品、などなど、最終製品の取り扱いのすべて関しての可変部分の調整をする。


<<入力から出力までの変化>>


(外注への)入力段階から出力にかけてどう変わっていくのかを90年代後半時代のトレックWSD自転車の初期モデルを例に見てみよう(ちゃ:Women's Specific Design)。

これは女性専用の競技用ロードバイク(women-specific road race bikes)で、小さいサイズでサドル角度がかなり傾斜がきつくなっている(76度以上)。トレックはこれではシフト時に問題となるとわかり、通常の73度となるようにディレイラーを後ろ寄りに位置させるフロントディレイラーブラケットを用意することにした。

そのときボクはクインタナルーとマーリンを経営していて、サンマルコスのQRでマーリンの新アリエルトライアスロンバイク用のカスタムクランプオンのフロントディレイラーブラケットを使っていた。これは複雑な部品で、高価なFadalホリゾンタルCNCミルで作っていた。

トレックはうちにWSD用に購入したいと相談してきたけれど、これは高価だから価格的に見合わないよと教えてあげた。

トレックは既成のシマノ製フロントディレイラーブラケットに二次加工を加えてなんとか問題を回避した。

この話でいいたいことは

(外注した)自転車は
かならずしも計画した設計通りには出来上がってこない

ということ。トレックの組立技術者ならこんな話をたくさん抱えているはずだ。トレックのライバルの自転車会社でもどこでも同じはず。


<<最後のひとこと>>

プロダクトマネージャーについて最後にひとこと。

プロダクトマネージャーというのはコンポーネント工場、フレーム工場、サブアセンブリー工場などからの接待攻勢にあっていることだろう。確かに、君もトレックのジョン・バークやキャノンデールのスコット・モンゴメリに会食をふるまうことができる。そう、彼らは接待される会社側だけれど、しかし、それでも彼らは自社のプロダクトマネージャーにスペック決めや工場決定を遅らせるよう指示できる。だからこそ、ジョー・バデボンクールは、自転車業界で最も実権をもつひとりといえるわけ。スペシャライズドボブ・マーゲビシャスもそう。ライバル(counterparts)のキャノンデール(C'dale)、ジャイアント(Giant)、ラレー(Raleigh)など他もみな同じ。これに等しい力を持っているのは台湾のエージェントだけで、こういった自転車業界「ベルト地帯」の中の人たちでさえ、自分がどの程度の力を持っているのかについては本当のところわかっていないし、どのくらいの富を創り出しやり取りしているのかについても真には理解していない。これ以上はまた別の回で。(注記:マーゲビシャスは自転車業界では別名キングオブスペックといわれる人物。スペシャライズドの調達のトップとしてここ数年間働いている。)

ちゃま:ここでの『調達』とは『完成自転車調達』のことです。OEM/生産委託先との関係を担当しているということです。だからスペシャライズドで台湾、中国、をよく知る方ということです。



台湾の代理人
THE TAIWANESE AGENT
これから台湾について書こうとしていることは君だけのためではなくて自転車産業界にいる人95パーセントに向けてのもの。台湾でかなりの時間を過ごしている人だけが、台湾で何が起こっているのか、本当の姿を知ることができる。


これを読む君がどんな人かなんて気にして書いていないし、台湾について知識があるかどうかも前提としない。台湾の真実を知ればぶっ飛んでしまうだろう。スペースシャトルとか核ミサイルを作ろうと思ったときには、知りうる限りの都市からやっぱりLAを選ぶとおもうけど、合理的で技術力が必要とされる複雑な部品を素早く手に入れたいならLAやシカゴやピッツバーグは選ばない。台中。価格面が理由というだけじゃない。台中は100万人都市で『教育と文化の中心地』と一般にはいわれる。しかし、ボクの見たところ、数多くの製造関係者のアイデアで成り立っている場所じゃないかな。台中は巨大なミトコンドリア。台中全体が一つの巨大工場。


ただ漠然と眺めただけじゃ全く分からない。発展途上国によくあるかなり汚ない都市に見えるだけだ。どこでもいいから台中のメインストリートから一本脇道に入って少し歩いてみよう。目を惹くような大企業の広告がないのは無視。オークやチェリーの机に座った太っちょが何かを訴えかけてくるような広告はアメリカのやり方(だから台中になくて当然)。ドアを開けてはいってみると、CNCミルや旋盤の列また列また列また列。隣に入ると、巨大な鍛造プレス装置が何台も並び、大きな音を立てて動いている。


その隣はチュービングミル(チューブ製造機)やドローベンチやCNCチューブベンダーも1ダースくらいあるかもしれない。通りをいくあの男はチューブ業者(extruder)かも。いや、機械を2-3台使っている程度の小規模ショップかも。

どれもが印象的な光景。先進国のハイテク職人が怖がって手を出さないことも台湾ではコンポジット(複合素材)を使ってやってしまう。ボクはアメリカ国内のコンポジット工場で(コンポジット原料の)「チップの海」を見て回ったことがある。その後、台湾でも同じ光景をみた。台湾が違うところは規模が3倍大きいことだけ。アメリカで100万ドルかけて作るオートクレーブ設備は3-4万ドル程度でできたといわれた。でも使ってないというから面白い。なぜ?それはカーボンゴルフシャフトなどの日用品に使われるものだから。中国本土との競争で台湾では十分安くとはいかなくなり、そういうものは作らなくなったから。


でも台湾は文句を言わない。台湾は中国本土に工場をたくさん持ってるから。君のケストレル・タロンを例にとろう。台湾の会社が製造している。しかし台湾では製造していない。それは台湾の会社が中国本土の工場でつくっている。君も使ってるカーボンフォークの多くがそうだ。アメリカのコンポジットメーカー製のカーボンフォークもその多くがこういったもの。


台湾に欠けているものといえば、アメリカやヨーロッパのもつデザインセンス。ケストレルのアジアの請負会社では、ケストレル自身がワトソンビルで作るタロンの50倍を作ってしまうけれども、ケストレルのデザイン能力なしにはその最初の1台が作れない。


しかし、台湾に一社だけ、トレンドに金をかけている会社がある。それはジャイアント。トレックではだれもこのことについてコメントしてくれない。アメリカの一流会社が、キャノンデールとかスペシャライズドよりずっと一番のライバルであるはずのジャイアントに対し注意を払っていないなら、ボクは本当にショックだよ。ジャイアントは請負だけをしている会社じゃない。自分自身で投資し全プロセスを実行する能力があって、デザイン面でもライバルたちと歩調を合わせられる力を十分に持っている。

キネシスやトピークなど台湾の新興企業の多くは元ジャイアント役員が設立した会社なんだ。台湾には"Giant U"(ジャイアントユニバーシティ)という言葉がある。"Giant U"の卒業生が起こした会社は、ジャイアントのシステムから生まれてきたものという意味で、つまり以前はジャイアントの従業員だったということ。ジャイアントで競争の仕方を学んできた。


以上の話どれをとっても台湾はお見事。ところが、ここ5年間で台湾は絶対的な神になり、皮肉なことに台湾は自転車ビジネスからはずされることが多くなった。数年前、MTB市場が曲がり角にきて自転車が日用品になると中国本土で生産できるようになった。台湾の自転車工場はよくて半分しか稼働できなくなった。そして突然、警鐘もなくシュウインが破綻(ちゃま:1992年2010.12訂正⇒2000年* ⇒投資会社Questor Partners Fund のポートフォリオ事業となっていたSchwinn事業の倒産のこと
ジャイアントの本
第八章 台湾投資 「SchwinnGTの件は業界損失が大」。
第四章:自社ブランド「シュウイン社が2度破産申請」の2度目のこと。1度目の破産でスコットと投資会社の持ち物になりスコットの破産で転売されてクエスター投資会社傘下になっていたときのこと。

ちゃまは最初1度目と思ってしまいました。2度目はSchwinn/GTとかかれることが普通ですから。
「日本で15年前に起こっていたから」とこれであいます。2000年の15年前1985年頃ということです。それいぜんの1970年代からの15年間は日本が、いまの台湾中国の役割をしていた時代でした。つまりOEM生産、委託生産請負です。それから10年ですべて変わりました。
)。台湾の工場は1000万ドルの負債をかかえた。シュウイン、そして中国本土「問題」、さらにはMTBの曲がり角という3重苦が台湾を襲った。しかし本当はすべて事前にわかっていたことだった。同じことが日本で15年前に起こっていたから。景気の波と台湾の出現で日本のたくさんの会社が経営の岐路に立たされた。


台湾の会社が生き残るには三択から一つを選ばなければならないと悟った。1)自身のブランドを築く(ジャイアント、トピーク、KHS、Race Face、FSA、Titecなどのように)。加えて中間レイヤーを一つ二つ削りマージンを確保する、2)中国本土に投資し工場を建てる。これはベトナムや南アジアでもいい。3)技術レベルを研ぎ澄ます。シマノが日本の自転車産業危機から生き残ったように。

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Shimano シマノ
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3点目の理由。3年から4年という短期間で、台湾はクランクセットのような複雑なものが作れるようになった。自転車クランク製造は非常に難しい。コンポジットも非常に適切に使用できるようになってきた。要求通りのものを台湾の会社に依頼するのは10年前にはかなり困難を伴う仕事だった。高級市場に台湾製を使おうとした途端、七転八倒した。なんどうんざりしたことだろう。ぜんぜん実りのないエクササイズをしているようだった。ところが今は違う。銀行口座が空だったりすることも工場が稼働していないようなことも、いまはない。


ボクがここに書いているのはどれも「台湾の重要性」を説明したいため。メイドインUSAの会社でさえも、トレックやキャノンデールやABGでさえも、台湾が必要。

キャノンデールを例にしよう。ここは前3社のうちでフレームがすべてアメリカ製。ボクは何度も台湾の路地裏にあるアルミ工場を訪れた。そこで面白いものを見た。Codaクランクセットが作られていた。キャノンデールも事業のためには台湾に頼らないとやっていけない。

トレックのボントレガーのステム、シートポスト、サドル、リム、ハブ、などなど、台湾製だ。

メーカーロゴをつけた自転車用バッグやハンドルバーテープなどはすべてがそう。ロゴなしステムやハンドルなどエントリーレベルの自転車に使われているものもすべてそう。


君が作っている自転車やパーツを台湾製にするなら、現地にいかないとだめ。現地をみないとトラブルになる。

台湾工場は君を王様あつかいする。一見素晴らしい待遇だ。生産に入ればこんどは賞賛の嵐、拍手喝采される。

必ず子守(ベビーシッター/見張り=エージェント)を雇うこと。どの国も同じと思ったら大間違い。さらに、best intentionsの場合でも工場にはミスがつきもの。その殆どは製造工程で起こる。一筋縄ではいかない。一本のDNAが突然変異してしまうようなもの。タンパク質の突然変異とは全く異なる事態。君はエージェントを雇い、常にウォッチしていなければ大変なことになる。そしてエージェント業務は雇われたエージェント本人がやること。そしてエージェントは中国語が話せること。


自身のエージェンシーを持つという選択もある。トレックやリッチーは自身で現地法人を設立している。でも西側にある大半の会社は独立系のエージェントと契約している。そういったところは台湾人経営の台湾企業で製品に対し(例えば)5%のマージンをとる。契約上は。


エージェントを使うメリット(あるいは雇う側の義務)の一つとして、「エージェントが自分の工場を教え直してくれる」ということがあげられる。これは必ずある。「うちの会社はよく作っている(うちじゃないとこんなにうまく作れない)」と君が思っていた製品なのに、あっという間に別の工場が作ってしまって、そんな程度のものだったのかと思い知らされる。これはどうしてだろう?「古い工場の品質は嫌なのです。(依頼した工場からの納品検収で)多くをリジェクトしないといけないですから。」とエージェントはいうかも。 そうだね、そんなことになったら価値なしだ。いいよ、エージェントは君だ。君はベストを知っている。


多分こんなことが実際に起こりえる。ある工場がエージェントが提示した5%にさらに20%のキックバックを支払う契約をするかもしれない(それ以前に別の工場が10%で決着していたのをひっくり返して。) あるいは、できたばかりの新しい工場が、受注のために、全く君に関係ないビジネスで積極的な魅力的な価格を提示したときには、君のビジネスもその請負内容に一括して含まれてしまうかもしれない。そしてもちろん、この交渉のどれにも、君は関与できない。君は全く知ることがない。君が工場に金を支払っているわけじゃないから。君はエージェントに支払っているだけで、工場に支払うのはエージェント。もっとも、君が工場に支払って、工場がリベートをエージェントに支払うというのもありえることではある。つまり、(君のビジネスに関して)エージェントの収入が君からだけということはありえない。だから「エージェントが(君のビジネスで)得る本当の金額」は君にはわからない。

ここでわかることは・・・・
頼む側はエージェント(商社)を指名するだけで、作っている工場は指名していないことも多い
ということ

頼んだモデルがどこで作られているか・・というのは、頼んだ会社もある程度形になるまで、知らないかもしれないというわけです。

「AブランドはB会社がつくっている」なんて1対1対応・・という固定的なことはほとんどありえないのでしょう。モデル毎に違っていると考える方がいいのでしょう。ロット毎(つまりヒット作でもなければ年単位)で頼む先が異なると考える方が、現実なのでしょう。だから、そんなことをユーザーが気にすることは、購入時の選択ポイントであるはずがありません。


トレックやリッチーが台湾にオフィスを設立する理由を、あるところの役員が教えてくれた。(彼らはそうだとはいわないかもしれないが)「台湾マフィア」という言葉が意味するものを排除するためだと。

ボク個人的にはこれとまったく異なる見方をしている。もし本当にビジネスの5%分の意味するところを真剣に考えれば、台湾のエージェントがなぜそんなに安く働いてくれるのか疑問に思わないメーカーはおかしい。真実は違うとおもう。リベート(英語でpayolaペイオーラとかスペイン語でmordidaモルディーダとか)と呼ばれるものは大半が事実上収入としてあつかわれる。数少ないがボクらと正面向いて話をするエージェントもいる。そしてこういうだろう。「これを5%でやるのは無理だ。25%必要だ。」このエージェントが他と違うところは正直に話しているということ。5%のところでも25%のところでも君が製品につける価格は結局まったくかわらないはず。もし些細な仕事までもしてもらいたいなら、どのエージェントも(いずれは)25%になるはず。「そのエージェントはおかしい」とはボクは言えない。

台湾に初めていったとき、ボクはアメリカ人の感覚で事を運ぼうとした。そして、ボクは彼らにボク流の台湾取引を受け入れさせた。ボクはトリックには引っかからなかった。

でもすべてがこうもうまく運ぶはずがない。今もしボクが何か台湾でビジネスをするなら、時代の流れに逆らわないで、ソーセージを味わうように、それがどんなふうに作られているかなんてことは気にしないで、その製品を楽しめると思う。


ボクの台湾の印象はボク個人のものだから、「ボクは台湾の流儀を間違って捉らえているかも」とも思っていた。けれど、台北自転車展示会の時にコンベンションセンターの通り向かいにある台北ハイアットホテルのバーで同業者と話ししていて、「ボクの印象は他の人と変わらない。典型だ。」と思った。


台湾工場
THE TAIWANESE FACTORY
台湾には2種類の工場がある。自転車産業用として部品をつくる工場と単に部品をつくる工場だ。後者を見つける方が大いに好ましい。自転車の知識を持っていないはずなのに、ハブシェルを鋳造し成形し研磨できたり、7005番チューブを押出し引き伸ばしバットできたりする、そういう工場を手当できるのが台湾の優秀なエージェントだ。forge, machine and polish a hub shell; or extrude, draw and butt a #7005 tubeできる工場を手当できる。


後者というのは重要で、自転車業界になじんでしまったところでは最初に金銭の問題がある。クランクメーカーに、「クランクをフォージしてマシンしてブローチして四角い穴をコインして」と注文すると、ある程度の(ちゃ:ある程度高額な)業界価格を提示されることだろう。ステムメーカーに行って、ステムを頼むと、ステムの値段(ちゃ:自転車業界価格のステムの値段)を提示される。

しかし、もし、かなり複雑なチューブをフォージでき、良い品質が保てる、そんな3Dフォージング工場を自分自身で見つけられたなら、その工場は「このステムがどんなふうに使われるのか」など気にかけず、その仕事を全うしてくれる。


しかし、そのとき君に必要なのは、君自身がエンジニアリング能力に優れ、君自身のところで検査施設をもち、君自身のところでCADCAMデザインができるという能力だ。その工場は君のステムを作ってくれるだけで「ステムが壊れるかもしれない」とはいってくれない。その代わり君の工場がそう判断できる能力が必要になる。自転車用のステムを作っている工場で君のステムを作ろうとするなら、そのプレミアム分は支払いに当然入ることになる。


その他の工程もすべておなじ。自転車業界の価格というものがある一方で、探せば自転車業界ではない価格というものもある。これは大変な仕事で、足を棒のようにして歩き回らなければならないことだろう。探し方を知っている、ベストの工場で最低価格を見つけられる、そういう人を知っていたボクはラッキーだった。


しかし、フレームに限ってはこのダイナミズムは使えない。フレームはフレーム工場で作るべきもの。自転車のフレームは本当に正確に作られないといけないものだから。「高いレベル」の業界の人が自転車産業に参入と聞くといつもちょっと笑ってしまう。自動車のパーツや戦車のタレットや飛行機やスピードボートなんかを作っているところでは自転車なんかはもっと簡単にできるだろうと思ってやってくる。こういう人達は自転車産業が抱えている我慢強さというものに気がついていない。少なくとも他業界と同程度の我慢強さは必要。考えてみよう。ボクが(まだ事業をしていたとき)クランクセットをリジェクトしたとする。全体のランナウト(にげ)がラージチェーンリングのところで1mmの1/10大きかったという理由で。つまり、ボトムブラケットとクランクのスクエアホールカット部とが完全に完璧であることが求められているということ。そしてクランクアームは完璧にストレートになっていること。つまり、メタルはジョイント部では充分な強度があり、ペダルからくる荷重に充分に耐えられるものでなければいけないということ。非常に非常に大変な仕事だ。


同じく、フレーム製造は難しい。まっすぐにつくろうとすればするほど。リアホイールがチェーンステーのセンターにくるようにしながら、しかもリアブレーキホールの真下にくるようにして、そして、フロントとリアのトライアングルが互いにtrueとなるようにし、さらにヘッドチューブがシートチューブと平行になるように、フレームを作るのはとても難しい仕事だ。とても精密な自動車部品(カーパーツ)を作っている会社が何年もかけてフレームを作ろうと試みた後に、できない、とやめたことがあったくらいだ。


これが自転車産業が独立した産業とされる理由。これをうまくやれる人がプレミアム価格を維持できる。賢いプロダクトマネージャーやエージェントなら、自転車産業を知る工場に行かなければならないような(シビア)な場合でも、自転車工場ではない工場で安全に製造できる。

フレーム工場よりも組立工場はさらに複雑。自転車組立はせかすほど難しくなる。ボクは自分のガレージで自転車組立してトライアスロン用完成車一台の組立に一日の2/3はかかる。台湾の組立工場でどれほどの時間をかけて組み立てているのか知らないが、たぶん(何日とか何時間じゃなくて)何分単位だと思う。ボクは自転車を15分で組み立てると聞いてびっくりした。でも組立工場のラインで働く10人から15人くらいの組立工がそう言っていた。


友達のスティーブ・ヘッド(Steve Hed)と今回こんなシリーズを書いているんだと話したとき、笑って言われた。台湾について君が語ったら、君の読者の間では「環境にやさしくあることは自転車に乗ることを考える事」と思われると。もちろん、自転車に乗ることは自動車に乗るのに比べてグリーンだ(環境によい)。自転車を作ることはそれとは別の話になる。それは汚いビジネス。台湾の川は工場が吐き出すものでとても汚れている。自転車工場も例外じゃなく、それを目にすると悲しくなる。台湾はハワイと変わらず自然の宝庫だから。トロピカルパラダイス。山もありそれは1万3千フィートもある。台北でランニングするときには町の外へでる。スモッグの厚いベルトから抜け出すためにタクシーをひろって200フィートの 陽明山(Yanming Mountain)にいかなくちゃならない。


正直言って、君の(作っている)自転車を台湾製や中国製にすることはとても魅力あること。塗装は永久にフレームから剥がれない。アメリカのショップ(工房)でつくるなら、こんなオリエントでやっている塗装や製造工程はありえない。

でも環境と生産労働者についてとなると、これとは話が別。


自転車組立(bike-building)のインフラへの投資がかの地ではさらに加速していることについて触れておかないといけない。ものすごい自動化。自転車フレームや自転車パーツを製造している自動化工場のロボット映像は台湾でのもの。アメリカでそんな光景を目にすることはほとんどない。アメリカでの自転車組立(Bike building)は職人の領域に限られたものになった。それは小規模工房のものであって大規模工場では目にすることがほとんどない。大規模工場ではトレックのウォータールー工場やキャノンデールが東部の数州で組立しているくらい。


自転車の「メーカー」のほとんどが「製造をしていない」ということはたぶん君も知っているはず。フジはフジの日本の工場で作られ(*1)、KHSの自転車はKHSの台湾の工場で作られ、ライトスピードはライトスピードのチャタヌーガ工場で作られているが、スペシャライズドは(ボクの知る限り)自社工場というものをもっていない。(例外的にアメリカ側で作られている自転車が少数ある。それは販売全体から見ればごくわずか)。これは違っているかもしれない。最近も変化しているから。

(*1 自転車は台湾のアイデアル製。1997年に当時の親会社だった東食が破綻して、1998年には台湾アイデアル(愛地雅工業)の関連の傘下になり、アイデアルでの台湾(あるいは中国)製造になっているようです。)

スペシャライズドを悪く言っているのではないので誤解なきよう。ナイキだってシューズ(footwear)製造会社ではないし、リーボックもそう。こういった会社のほとんどはデザイン部門があるだけで、それに販売とマーケティングのオフィスがあって、そして頭のいいCFOが金銭の管理をしているというもの。
(一方、台湾で、)自転車を実際に作っている人たちは、ランス・アームストロングとかエディ・メルクスの名前なんかは聞いたことのない人達で、「楽しみのために自転車に乗りましょう」なんていわれるような街には住んでいない。




組立者(組立業者)/アセンブラー

THE ASSEMBLER
(日本ではよく組立工場といわれて、人と機能と建物を一つにして表していますが、アセンブラーは人に重点があるようです。機能や建物はその人に従属するもののようです。 建物中心で考えるようになっているのは、組織中心の世界観とつながっているのでしょうか?日本?それともアジア?の世界観でしょうか?)

工程でこの段階がどのくらい重要なのか?それは組立が金銭に関わるすべての部分を扱うというところだ。君がアメリカの自転車メーカーだというなら、君は販売とマーケティングのオフィスをもちヘッドバッジ("headbadge")のオーナーで、自転車はオリエントで作っていることだろう。君はエージェントに金を渡すか、組立に直接金を渡すかのいずれかだ。いずれの場合でも実際には組立が金を扱う。全てのパーツ、そしてフレーム会社に支払う。


組立者はとても重要な役割の人。というのは、「スペックの推奨をする」から。この推奨をプロダクトマネージャーは非常に丁重に取り扱う。君の自転車が組立のところで「待ちを食らう状態」はまずいだろう?ステムの納期が間に合わなかったら(早く安く作れる)メリットを享受できない。だから組立がいう「”プロファイルデザイン”か”ボントレガー”をスペックにすればいい。他のステムメーカーは納期があやしい。」 これはかなりの重みをもつ。

2001年6月1日 オムニウム Omnium がSchwinn/GTを未支払で提訴 - Schwinn2回目の倒産直前 - オムニウム・台湾のFritz Jouの米国内アセンブリー工場でメイドインアメリカができる仕組み

Omnium つづき 2001年9月1日 米国自転車組立業者は他に Advanced Transportation Products (ATP)やClass Act

オムニウムは終了しているようです
組立業者も散々な目に合うことがある。ボクの覚えが確かなら、美利達(メリダ)順捷(FritzJo / Fritz Jou Mfg. Co., Ltd. )が両方共、シュウイン破綻でかなりの損害を受けたという話がある。順捷(Fritz Jo / Fritz Jou)のアメリカの部隊Omniumが特にひどかったという話だ。伝え聞いた話だけど。


<<Omnium>>

Omniumは興味深い会社。Omniumはカリフォルニアのサンルイスオビスポに組立工場がある。中規模メーカー、特にトライアスロンメーカーにとって、ここはまさに神の贈り物。
組立では、リア側がとても難しくて苦労する箇所で、アメリカで完成車を作るのが難しく台湾で作るのが望ましいという理由の一つがこれ。フレームに適切に部品を取り付けるというのは本当に難しい。


アメリカ製フレームが必要なら、数多くは、たとえば年1000から4000本は、手に入らない。オフショアのプロジェクトでやらなければそれは無理。しかも、さらにそのフレームへのパーツの組み付けをアメリカでしたいという場合、そのフレームの数は多すぎてこなせない。かといって、組立ライン(アセンブリーライン)を用意できるほどコストが見合う数でもない。

だからOmniumにフレームを送り、そこでパーツを取り付けてもらう。Omniumでは作業後にフレームを梱包して小売店に送ってくれる。Omniumは君の倉庫業務までやってくれるというわけ。


Omniumと同じ米国内自転車組立請負業態だったClassAct(クラスアクト):スペシャライズドとクラスアクト(Class Act) スペシャライズドフレームのクラスアクト以外での再塗装は保証対象外 2009年ごろの情報で
スペシャライズドはもっとたくさんアメリカ製フレームをつくりたくてユタに自社組立工場(assembly factory)を建てた(*2)。トレックももちろんウィスコンシン州で自社組立している。キャノンデールも自身で自転車組立をしている。だけど、外注請負できる会社(アウトソースベンダー)は稀で、Omniumはまさにそれにあたる。他国にはあるけれど、ボクはアメリカ国内ではこの会社以外知らない。

(*2 上の台湾工場ではスペシャライズドには工場がないといっています。工場(factory)と組立工場(assembler)とは完全に分けて考えましょう。)


これ以外のやり方はひとつしかない。それはディーラーに頼むというやり方。ごくわずかの小規模メーカーがやっていることで、パーツ流通業者と変則的なOEM契約(modified OEM arrangement)を結んでいる。セキュリティバイシクルアクセサリー(Security Bicycle Accessories http://www.securitybicycle.com/ )というパーツ流通業者がこの先駆者。君が電話して「こっちでミッションベイマルティスポートにフレーム販売したから、そちらからはトライアスロンキットを先方に今日中に発送してくれ。フレームとキットが同時に着くようにね。」 これが契約上想定している理論的な動き。しかし、実際には時々うまくいかないことがある。なんどディーラーがボクにいってきたかわからないくらい、「フレームはここにあるけど今日は木曜日だからこっちのUPSはもう出ちゃったんだ。お客は土曜の朝に自転車を欲しいと言ってる。」たぶんSBAはキットを出荷しなかった。たぶんフレームメーカーは発注を忘れた。運が良くてもUPSが文句を言われる立場になる。いずれにしてもディーラーは恐怖を味わう(white-knuckle)。

これだからディーラーは完成車納品を好むようになる。だけど、どのディーラーもそう、というわけでもない。中価格帯以上の自転車だったらどんな自転車でも一旦バラして組み直しするディーラーもある。プロの組み付けしか信用しないところは。


流通/ディストリビューション
DISTRIBUTION
最終購入者(エンドユーザー)が自転車を目にするのは、自転車店(LBS/Local Bike Shop)のショールーム、それか通販カタログの紙面。だけどその自転車がどんな道のりでそこに届いたのかまでは目にしない(知らない)。


自転車などLBSが販売しているもの、それが溶接屋さんや塗装屋さんから届く道筋が複数ある。自転車ビジネスの競争が激しくなってそのダイナミクスは様変わりしたけれど、どんな場合でも流通という役割は変わらずにある。流通でなにか違いがあるとすればメーカーが自らやっているか第三者がやっているか位なもの。


流通業者を使うとメーカーは自分のところの営業を使ってやる時よりもマージンが取れない。だから、「製品自体の魅力でかなり多くの顧客に売れる」と考えた時に、流通業者に売る。メーカーである君にとって流通業者が必要不可欠の場合とは、1)君の自国以外で小売店にリーチしたいとき、あるいは、2)小額かつ日用品レベルでそして君自身の能力を超える位たくさんの小売店を相手にするとき。


メーカーとしてトピークを例にあげると、これはどちらのカテゴリーにも入る。トピークは台湾を拠点とする会社で本国よりも国外での販売が多い。たくさんの小売店に販売しないといけない。アメリカには小物の自転車ツールを扱う小売店は2000ある。ケストレルならアメリカで200店舗くらいでの販売だ(ケストレルは小売店側が商品を引取りするよう要求している)。


トピークは流通にトドソン(Todson)という会社を使っている。トドソンはニール・トドゥリスの会社で、RenoやネバダのCarnac自転車シューズの流通をしているシンクレアインポーツ(Sinclair Imports)と似て、流通業者としては珍しいブランドビルダー。(ブランドビルダーとはボクの呼び方) 単なる倉庫業務や製品出荷業務をしてくれるだけじゃなく、文字通り君のブランドを創り上げてくれる力をもっている。Dedaコンポーネントはシンクレアが最初に米国市場に紹介したブランド。Carnacはシンクレアにロイヤリティを与えて、その代わりにシンクレアがCarnacのブランド構築をし、Sidi、ナイキ、シマノといったコンペに対抗できるような米国市場に確固たる地位を築くよう要請した。ボクはSinclairの仕事としてのDedaはあまりいいできではなかったと思う。

http://www.todson.com/


だからDedaは他の流通に売られてしまった。多分ミネソタのツインシティにあるクオリティバイシクル(QBP)が扱うのがいちばんいいんじゃないか。スティーブ・フラッグは自分の会社を一から立ち上げて効率神を築いた。スティーブは(私見だけど)ブランドビルダーじゃないが、業界の重要人物にはかわりない。スティーブは君が、小売店が欲しいと思うものを手に入れ、適時に出荷し、低価格で販売できるマスターだ。


君がニッチなハイエンドの会社を手がけているなら、そう、セロッタとかジップとかなら、君は(君と小売店との間に)流通業者をおかない方法を選択するはず。代わりに営業担当者(representatives)を置く。営業担当者の場合なら流通業者を雇うマージンの1/4から1/3しかかからない。流通業者は製品をメーカーから購入し、倉庫に入れ、出荷する。そこに金がかかる。しかし不動産の営業なら、君の貸家を倉庫にいれたり運んだりしないし、一度買い上げてから再販ということもしない。自転車メーカーの営業担当者の経費といえば単に、店から店に移動する旅費が主なもので不動産の営業と同じ。


営業には独立営業というものがある。彼らは個人事業者で、一人当たり4から8の『ライン(line)』をもっている。『ライン』とはテリトリーのこと、複数州にまたがるものもあれば、南カリフォルニアの複数カウンティ程度のこともある。アパレル(ウェア)、フットウェア(シューズ)、アクセサリーを扱っている会社で典型だが、高価格帯商品を作っている数少ないハイエンド会社でも独立営業担当者を置くようになってきた。セロッタやジップがこれにあたる。


トレックなど大規模メーカーは、社員として営業を抱えている。トレックでは社員として雇用しているが製品販売だけを担当させている。自転車業界で社員営業をする分岐点は年商1億ドルだろう。ということはトレック、スペシャライズド、キャノンデール、それとたぶんジャイアントも、このあたりがアメリカの自転車会社で営業社員を持てる会社だろう。


多くの自転車メーカーが他国展開できないのはその厳しい経済状況にある。ここでは輸入税や出荷経費についての話じゃない。君の商品と小売店との間に流通業者を抱えるということは小売価格に巨額の上乗せをすることになる。コルナゴやデローザがアメリカでどうしてそんなに高額なのかと思うだろう。それは単に職人の技術によるものというだけじゃない。追加のマージンのためだ。自転車一台に付、数100ドルが上乗せされている。自社での流通を国外で行えるトレックやキャノンデールのような体力がないなら、自転車という低マージン商品の輸出は困難を伴なう。


だけど、低コストだがイメージが売れ行きを左右する商品とか、開発コストが高い高マージン商品では、そうではない。オークレー(Oakley)サングラスとかジロ(Giro)ヘルメットならモデルの開発時期やマーケティングや成形金型の製造準備時期にはコストがかかるかもしれないが、それでもビッグマックみたいに型からポンポンとモデルを取り出して数をこなせる製造段階にこぎつけられれば、輸入業者のマージンを圧縮して国外販売することは難しくない。


製品がどこでどのように生産されるのかのダイナミズムと、君が話題にしている製品の位置づけ(クラス)がわかれば、「確固たる海外市場を築いているメーカーがあり、その一方で、国内市場の顧客基盤に縛られているメーカーもある」というその理由が理解できるはず。


エンジニアリング、品質管理、安全性
ENGINEERING, QC, AND SAFETY
性能と安全性の両面で自転車のエンジニアリングとテストはオニのように難しい。性能については風洞実験を少し経験すればすぐにそれがわかる。単なる数学の応用では力やベクトルやその他いろんなことが事前にわかるようなものじゃないと理解する。自転車にごく短い糸を結びつけて風を送って糸の様子を見ると、数箇所では空気の流れが自転車の進む方!!に向かっていたりする。転がり抵抗や車輪のサイズについては?テストは同様に難しい。


安全性のテストなんてもっとずっと簡単だと思っているだろう。フォークやステムや完成車をテストマシンに置いて、壊れるか壊れないか・・・と思ってるだろ?そう考えて、ボクの同僚が台湾から1万ドルのテストマシンを買った。見事な最先端で、他社も使ってるやつ。これで問題は解決した?


最初にテストした自転車はマーリンのオフロード車のニューモデル。CNC製作したユニステーで不具合が起こったから。ユニステーはアルミ製でシートステーが下にクランプ締めされる。ユニステーは上側の位置にある。自転車を機械に載せて、新しくしたクランプがどのくらいもつかを見守った。チェーンステーが最初に壊れた。いいぞ!問題は解決だ!・・・その後、古いクランプでもう一度やった。これもチェーンステーが最初に壊れた。(あれ?)シートステーに取り付けたクランプには関係なく、チェーンステーが最初に壊れて、クランプはまったく壊れない。機械が加える力が実際に加わる力とは違うのは当然。マーリンのこのモデルでMTBチェーンステーが壊れたことはいまだかつて一度もなく、実際に壊れたのはシートステーのクランプだけ。


テストとエンジニアリングが難しいということはこういうこと。何が壊れるのかは絶対にわからない。自転車をよく知らない、自転車の経験のない人間を雇うことを自転車メーカーがなぜやらないか・・・これがその理由。アインシュタインでも自転車の力学の計算はできない。ボクは大学を金時計で出てきたばかりのエンジニアよりも15年間様々な素材で実際に自転車を作ってきたエンジニアを雇う方をとる。もちろん大学出のエンジニアであってかつ熟練した自転車デザイナーがいればそれに越したことはないけれど、サーベロ(Cervélo)のスタッフや(ボク個人が乗っている自転車メーカーの)バス・マンダリック(Ves Mandaric)みたいなのは数少ない。いざとなったときには、ボクは、キース・ボントレガーに頼む。ボクの知る中で最高。キースは大学出のエンジニアじゃない。卒業証書を壁にかけているような人よりも彼。


テストでかなりの距離を費やしている会社もある。キャノンデールは大会社の中ではベスト。君がキャノンデールに使ってもらおうと思っている部品メーカーならフラフープの輪でジャンプしないといけない。キャノンデールの構造検査をすべて達成し、さらに酸化検査もしないと。サビが早ければ却下。


レイノルズコンポジットが典型的なフォークテストマシンの写真を許可してくれた。これは業界で使われている他のものとほぼ同じ仕様だ。レイノルズは自社フォークと他社コンポーネントに膨大なテストをしている。テストされたフォークが写真左、ピストンが写真下を横切っているのが一回転毎の偏差の総数。右上の数字がフォーク回転数。まだ失格とは判定されていない。一定の偏差総数に達するとフォーク(自転車、コンポーネント)は『失格』と見なされる。


テスト標準を設定している会社があるが、業界として準拠するものがあれば一層いい。そうすれば君の新型ステムが(君がステムメーカーだったら)壊れるまでに30万回なら安全だとわかる。15万回でもほぼ安全とみなせる。不幸にして、そういう「業界に共通の標準」はない。ただし、フォークメーカーには、競合他社のフォークを数多くテストして他社フォークより長く使えることを確認すれば安全だとするフォーク業界での確認方法があることは知っているけど。


事例
わらっちゃうのは、設立間もない会社にボクがアジア製造のやり方をアドバイスしている。その会社がこれを読んだらもう一度考えなおすかもしれないな。ここに最高に魅力的で最高に美味しい事例をご紹介しよう。ほとんどの場合はなんとかなる。しかし例外もある。


ボクが海外で自転車を作ってもらった時にはエージェントの助けを受けなかった。生産を確認しに飛行機で出かけた。1週間ほど現地にいた。生産開始の最初の1週間だった。でもその1週間のうちには自転車生産がはじまらなかった。毎日いろんな言い訳を聞いた。「チェーンステーがこない。」「ディレーラーがこない。」フレーム一本の溶接を眼にすることもなく現地を離れた。その後数週間たってアメリカに自転車が届けられた。ひどい出来だった。半数以上が検収リジェクトだった。そんなふうに事態は進展した、というか、進展させざるを得なかったというべきか。


ヘッドサイクリング(Hed Cycling http://www.hedcycling.com/)のハンドルバーを例としてあげる。ジョン・コッブ(John Cobb http://www.cobbcycling.com/about.cfm)が雇われてハンドルバーのデザインとテストを担当した。コッブはヨーロッパと台湾に何度か旅をした。コッブは新フォークなど他の製品もやっている。

*ヘッド兄弟
*ヘッド社
*ジョン・コッブ:ヘッド社に雇われハンドルバーのデザインとテストを担当
ここまでの関係
1. ヘッド兄弟:
2. コッブ:ヘッドのヘッドハンドルバーの知識。ヨーロッパと台湾に知古をもっていた。

(Aerodynamic expert John Cobb goes solo)
It's Wind Tunnel Time!

一方、スティーブ・ヘッドとアニー・ヘッドの長年の友人、モーガン・ニコルは長年やっていたリッチー社ヨーロッパ担当トップを喧嘩して辞めたところだった。リッチー社はそれを期に台湾のエージェンシーを考慮しはじめた。結局自社でやることになって台湾現地法人を設立した。

リッチー社と破談したエージェントはジョセフ・チャオ(Joseph Chao)だった。ジョセフ・チャオはニコルと組んでオーバル(Oval)というコンポーネント会社をはじめた。

Johncobbb1
John Cobbさん YouTubeから
*モーガン・ニコル:スティーブ・ヘッドとアニー・ヘッドの長年の友人。リッチー社の長期にヨーロッパ担当トップだったがリッチー社と喧嘩別れ。
*リッチー社が台湾ソーシングでジョセフ・チャオを検討して破談にした。
*ジョセフ・チャオ=ニコルでコンポーネント会社のオーバル社設立。
ここまでの関係
3. ニコルはヨーロッパ
4. チャオは台湾
5. チャオ(X敵X)リッチー社
6. ニコル(X敵X)リッチー社
7. ヘッド(=味方友人=)ニコル
a コッブとチャオ、コッブとニコルは知り合いだったかもしれない
Morgan Nicol, Joseph Chao Launch Oval Concepts May 15 2002 Morgan NicolさんはRitchey Internationalで12年間経営者 Joseph Chaoさんの会社はJ&C International - Taiwanese component maker - JOSEPH & CHAO INTERNATIONAL CO., LTD. 7B, NO.118, TA TUN 20TH, ST,TAICHUNG, TAIWAN,R. O. C. FRAME,FRONT FORK,ALLOY HUBS,ALLOY RIM,BICYCLE SPOKES/NIPPLES,PEDAL,CALIPER BRAKE,HANDLE BAR STEM, "Ritchey Pro Mountain Pedal" Oval Concepts 2002年

スティーブ・ヘッドはそれまで台湾での生産をしたことが全くなかったので台湾の現地エージェントを使おうととした。スティーブの友人ニコルがチャオを紹介した。
*ニコルがヘッドにチャオを紹介 ここまでの関係 8. ヘッドとチャオが知り合う。(ニコルとで) チャオがヘッドの技術を知った。


ニコルは ヘッドのホイールでヨーロッパの新ディストリビューターとなる予定だった。スティーブ・ヘッドとジョン・コッブが一緒につくった他の製品でも予定となっていた。すべて順調だった。

*ニコルがヘッドのヨーロッパ流通を請負の予定
ここまでの関係
9. ヘッドとニコルがビジネスしようとしていた


インターバイクの数週間前になって、ヘッドがカーボンエアロバーが自分のものではなくなったことを知った。それはオーバル製品になっていた。台湾のエージェントのチャオが情報を漏らしたと思った。チャオとはうまくやっていたと思っていた。チャオにはツールの資金を送金していた。ヘッド社のバーを作ってくれるメーカーに直接指導しようとしたがあまりいい成果が得られていなかった。メーカーのコンタクトはチャオだった。(台湾では)エージェンシーとメーカーとの結びつきが強い。なぜなら、そのメーカーの他の製品の受注も、同じエージェントが請負のが一般的だから。簡単に言うと、ヘッド社は彼らに騙されたと思った。

*オーバル(ジョセフ・チャオ=ニコルの会社)からヘッドカーボンエアロバーと同じものがでた。

一方のニコルは、チャオのパートナーだが、ヘッドの長年の友人だったはずじゃなかったのか?ヘッド製品のヨーロッパでの流通権合意に達しなかったから関係が悪化していたのかもしれない。ヘッド社はニコルに助け船をだしてもらおうとはしなかったのだろう。ヘッドホイールのヨーロッパでの流通が任されなかったことでニコルがヘッズ社に対して不満をいっていたともいわれていた。

ボクは具体的なことを知らないし、どちらの肩ももたない。どんなふうにして事が終わるか、そして、大小にかかわらずどんな会社でもいつかは起こり得る、そういう具体例として単に挙げただけ。サーベロと、あるフレームベンダーも、同じように数年前に袂を分かった。トレックとロルフディートリッヒ(Rolf Diettrich)もそうなった。例としてあげられる話は捨てるほどある。手を握り合ってもうまくいかなかった関係もある。法廷決着に持ち込まれた話もある。そうなってしまうと、たいてい、双方ともに失う(双方とも負け)。


でもヘッドの話はハッピーエンド。ヘッド社はインターバイクでニコルとオーバルと合意に達した。これを書いている時点ではそれからまだ1週間もたっていない。ヘッド社はエアロバーを取り戻し、オーバルは(コッブの)フォーク、アルミ製エアロバーなどの権利を得た。オーバルがコンポーネント事業で力を持つことになるのは確実。ジョン・コッブはどちらとも変わらず友人関係を保っている。ヘッドのバーはインターバイクで脚光を浴びていた。


以上の話からわかることは、道徳というか、倫理というか、友情というか、そういうものは存在しないということ。信頼できるものは何もない。製造された物を手に入れたからといって安心できない。その上で守るべきものを守らないといけないということ。持っているものを確実にしていなければいけない。


ダンさんの話はここまでです。

オーバルコンセプツ社は2009年12月にFujiを持つアドバンストスポーツ社に買収されています。

ここから下には、ダンさんの話にでてきたものの参考を置いておきます。


Saucony(サッカニー):
Stride Rite Corporation(Kedsなど)傘下のシューズブランド。ブランド名は1898年ペンシルバニアに創業したシューズメーカーSaucony Shoe Manufacturing Company。1968年に同業のHyde Athletic Industriesが買収。傘下ブランド。クインタナルー(とリアルデザイン)はHyde Athletic時代の1995年6月にSaucony社に買収されました。1998年2月にマーリンを買収しています。(マーリンの創業者の一人ロブさん(Rob Vandermark)は、その後セブン(Seven Cycles)を創業しました。) Hyde Athletic Industriesは1998年に社名変更でSaucony Inc.(サッカニー社)に。このSaucony社(旧Hyde Athletic社)を(Kedsなどを持っていた)Stride Rite Corporationが2005年に買収しています。さらに2010年現在では2007年創業のCollective Brands Inc.という会社 の Performance + Lifestyle Group事業部門に属するブランドになっています。そして今Saucony, Sperry Top-Sider, Keds, Stride Riteというブランドが一つの会社に属しています。Collective Brands社とはシューズ小売業のPayless ShoeSource社がCollective Brands Performance + Lifestyle Group(旧Stride Rite Corporation)を買収して、自社とあわせてつくった会社です。詳しくはこちらをご覧下さい。

日本ではアキレスからサッカニーが販売されています。アキレスでは「SAUCONYは、1898年米国・ペンシルバニア州クーツタウンで創業した全米で最も歴史のあるアスレチックシューズメーカーです。 」と紹介していますが、少なくとも現在のSAUCONYはメーカーではなく一ブランドです。現在の会社の実態(メーカーとしての)はCollective Brands社です。SAUCONYのブランドサイト(saucony.com)での説明はAbout UsのManifestoにあります。そこにはどこにも「SAUCONYは、1898年米国・ペンシルバニア州クーツタウンで創業した全米で最も歴史のあるアスレチックシューズメーカーです。 」とは書いてありません。そんなことに触れることを避けていると思えるほど歴史には触れず、書いてあるのは「ブランドに込める思い」だけです。でも現在の商品開発の心が歴史にあるのではないなら、この「商品に込める思い」の説明のほうが真実ではないでしょうか。

Collective Brands社情報では『Saucony is a leading running lifestyle brand that fuses performance, innovation and style to produce award-winning footwear and apparel. Our vision is to create the next great global athletic brand by leveraging our leadership position in the running channel. For people who love to run, Saucony creates the best shoes and gear on the planet, because we are tirelessly devoted to inspiring every runner on every run, on every day. At Saucony, we run.』です。こちらも『思い』だけです。Visionです。サッカニーを創業者や創業の地と結びつけるメッセージなどまったくありません。

これを見てまた日本のユニベガ紹介や日本のラレー紹介を思い出してしまいました。日本ではブランドを紹介するのにどうして創業者と結びつけるのでしょうか。それは現在の商品を紹介するには、ほとんどうそに近い話を紹介しているようなものです。アメリカで台湾のメーカーがモトベカンUSA、Dawes USA、Windsor America、 Cycles Mercier、Bottecchia USAなどを紹介しているのと同じです。アジア人は、創業者、のれん、ということに執着しすぎなのではないでしょうか。結局それは嘘を紹介していることになるのではと考えてしまいます。

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