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業界の基本:スポーツイラストレーテッド 1963年5月20日記事 自転車の復活

小柄な老婦人が大きな三輪車に乗って懸命にペダルをこいでいる上の写真は彼女が子供にもどったというわけではない。彼女は単にアメリカで昔あったサイクリングの熱狂の時代の再来に加わっただけなのだ。この再来は3年間にカリフォルニアではじまった。ロスアンゼルス大学の生徒が、かっこよくて軽量で多段ギアつきの自転車をみつけたときだった。

ちゃま:John L. Sullivan 1880年代に活躍したボクシングチャンピオン
多段ギアは彼らが輸入したギアシフトメカニズムにちなんでディレイラーとよばれた。これが全国の自転車ショップでジョン・L・サリバン時代以来の大ブームとなった。

ディレイラーなら15程度の異なるギアを変速することができる。サイクリストは普通の自転車で必要な力の半分で、山を登り、急な丘を下ることができる。熟練者なら、15段ディレイラーを装備して、パイクスピークを苦もなく超えられるだろう。

ちゃま:軽量自転車 lightweight: スポーツ用競技用の自転車
今日、軽量自転車のほとんどが輸入品となった。ヨーロッパのメーカーがその大半を埋めている。あるアメリカの自転車メーカーの推定によれば、ヨーロッパ製の軽量自転車がアメリカで昨年80万台ほど販売された。アメリカ製は10万台。最近しかし、アメリカ製はヨーロッパ製輸入品との競合を避けるようになっている。

ちゃま:ブルックス Brooks:この時点では英国のTI(Tube Investments)傘下だったラレー社がもっていたサドルメーカー。実際にはスターメーアーチャーの下におかれた。2000年のスターメー破産で、2003年、同じくサドルメーカーであるセッレロイヤル傘下に。ラレーのブルックス情報
たとえば、今月号のスポーティングルック色ページにあるメタリックブルーの自転車は、アメリカ製シュウイン。ヨーロッパ製ツーリング自転車のなかでも上位の品質に迫っている。シュウインのスーペリア(Superior)というスポーツ自転車は15段変速のディレイラーと輸入品のブルックスレース用サドルとテープ巻きハンドルを新たに装備している。これで125ドルだ。

ハフマン・マニュファクチャリング・カンパニー(The Huffman Manufacturing Company)もまた第一級のアメリカ製自転車メーカー。ハフィー・スーパー60(Huffy Super 60)男性用レーサー(80ドル)は黄色に輝き、Huretヒューレット10段ディレイラー(仏ブランドのユーレーですけれどここでは米だからそう呼ばれます)、スポーティなダンロップホワイトウォールタイヤ、調整可能トークリップ、スタミナボトルを装備している。スタミナボトルはサイクリストがレース中につかうもので、すぐにエネルギーになる”燃料”をいれておくもの。

今回は家族全員を巻き込んだサイクリングブームとなり、タンデム2座席が戻ってきた。レーサーはもとよりロマンス最中のカップルにも。ハフマンでは中程度の重さ(middleweight)のタンデムをつくっている。これは詩的な響きの名前でデイジーという。デイジーは90ドル。シュウインは自社の新型タンデムを「2人用自転車(Bicycle Built For Two)」となづけた。(ちゃまTea for two「二人でお茶を」は1950年の映画です。これなら「二人で自転車を」ですね)。これは100ドル。ロスアンゼルスのウエストコーストサイクルサプライカンパニー(West Coast Cycle Supply Company「あなたの自転車の賢い供給元」と自称している会社)はイギリス製のタンデムシリーズの卸をしている。これはジャックテイラーがサンデーツーリング用にデザインしたもの。スポーツタンデムは10速ディレイラー付属で245ドル、 "double-gents"(男2人用)または "lady-back"(後部婦人用)のモデルがある。

大人用三輪車(Adult tricyclesトライシクル)はイギリスで開発されたもので、80歳代や郊外のご婦人たちの間で人気がでている。彼女たちは自分の宣伝にこれを使っている。昨秋、パームスプリングスのトレーラーパークに住む人たちがThree Wheeler Club(三輪クラブ)をつくった。砂漠のリゾートでの終末の旅行に大勢で三輪車にのるクラブ。ケネス・ダベンポート婦人「いままで自転車に乗ったことがなかったけど、このトライクなら乗れるわ」と。

普通のサイズの自転車ならほとんどが三輪車に簡単に変換できる。イギリスのTヒギンズ社(T. Higgins, Ltd.)がこの変換キットを作っている。後輪をはずして付け替えるだけ。Gene Portuesiがデトロイトのミシガン通りのCyclo-Pediaで輸入している。75ドルで通販で購入できる。完成車は125ドル。

一輪車は10代の間でブームとなりつつある。去年、ローズボウルのパレードで一輪車が使われた。マサチューセッツのコロンビア・マニュファクチャリング社(Columbia Manufacturing Co., of Westfield, Mass., )、アメリカの最古の自転車会社、は40ドルで一輪車を販売している。

小径の車輪をもつ自転車はしたのイラストにあるようなペニーファージングといわれる50年前のサイズの大きな革新的な自転車を追いかけている。イギリスのブラッドフォード・オン・エイボンのアレックス・モールトンがデザインしたもので、一般的な軽量自転車(レース用自転車)よりも、快適性、コーナリング性、加速性に優れている。これはモールトンの特別な自転車用ショックアブソーバーシステムによるもの。これにより車輪のサイズは直径16インチと小さい(一般には直径26から27インチ)。結果、モールトン自転車は世界一快適な自転車となった。車輪サイズが効率的であるため、たぶん最も速い。イギリスのサイクリングチャンピオンであるジョン・ウッドバーンがこの小さな自転車にまたがり、ウェールズのカーディフ=ロンドン間の自転車走行記録を18分も縮めた6時間44分で走った。

モールトン、「新型のレース用を作ったわけじゃなく、家族向けの自転車で、家庭にいる女性が買い物などでつかえるものをつくった。サドルの高さを調整すれば、子供でも乗れる。」 ブリティッシュ・モーター・コーポレーション社(The British Motor Corporation, Ltd.)が自転車製造をおこなっていて、アメリカにはこの夏輸入される予定。

このサイクリングブームで一番変わっているのが古風なペニーファージングの再来。 ゲイナインティーズ時代(Gay Nineties era;陽気な90年代:1890年代)以来初めてのもの。ファルコン社が目がくらむようなオレンジ色のものを作っている。ロンドン自転車ショウで注目を集めただけだったが、アメリカの2つの販売店が100台を発注している。

この自転車の変わった呼び名(ニックネーム)は、サイズの大きいイギリスのペニー(前輪)と小さなイギリスのファージング(後輪)に由来する。現代のペニーファージング自転車も祖先とおなじように風変わりなものだ。前輪が48インチ(1890年代は60インチ)、後輪は16インチ。フレームは航空機用の強化スチール製。

ファルコンのジョン・パークスはこの座席の高い自転車のテストパイロットだ。ロンドンから2時間ほど離れた誰も走ったことのない道を自転車で20マイル(32km)走破した。オートバイでは低木に引っかかりながら進むところを、パークスは自転車で飛ぶように走った。「これに乗ったら10階建ての高さに感じるよ。雲の上に立っているみたいだ。」とパークス。

乗り方さえ覚えればペニーファージングに乗るコツを覚えたも同然。おてんばポニーに乗るほど難しくはない。ウェストコーストサイクルサプライとホイールグッズコーポレーションが100台を輸入し200ドル以上での販売を目論んでいるが、これはかなりの勇気だろう。

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